こんにちは。さわやか愛の家せとうち館です。
感覚(統合)のお話の続きです。
感覚と聞くと一般的には、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5感を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。感覚統合のお話を聞きにいくと、これらの他に「固有覚(固有受容覚)」と「前庭覚(平衡感覚)」という言葉をよく聞きます。
この2つの感覚に触覚をプラスした3つの感覚は初期感覚ともいわれ、発達のごくごく初期から働いていて私たちのその後の発達や機能の基礎を支えてくれる感覚です。そのため視覚や聴覚と違って普段その働きを意識しづらい、言い換えるとフルオートで働いてくれている感覚です。
普段オートで動いているものをいちいちマニュアルで操作をしなければならないとしたら面倒ですよね。あるいはオートで勝手に暴走していると大変です。事故っちゃう。
神経発達症(発達障害)の中には、こういった基本的な感覚のトラブルによって引き起こされる行動が多々あります。癇癪、他害、偏食、聴覚過敏(この場合も単純な聴力が原因ではないことが多いです)や姿勢の崩れなどが代表的でしょうか。
今回はその中でも「触覚」について掘り下げてお話ししてみます。
5感の中にもある通り、触覚は3つの感覚の中でもメジャーな感覚ですね。感覚を感じているのは全身の皮膚で、全部合わせると成人で畳一畳ほどもあるそうです。おそらく初期の生命(それこそアメーバのような)の頃から獲得している感覚なのではないでしょうか。
その働きは圧覚や温覚冷覚、痛覚など多岐にわたります。私たちは多くは触覚によって自分とそれ以外と(大げさに言うなら世界と)の境界を感じています。触覚の働きが不十分だと意識の中の世界では、自分と他者の境界があいまいになって、『他人との距離感が分からない』『力加減ができない』といったような問題が出てくることも考えられます。
ではなぜこのように重要な感覚に問題が出てくるのでしょうか。そこには単に感じ方が『鋭い』『鈍い』といったことではなく、感覚の2つの系統が影響を与えています。
では、実際にイメージしてみましょう。目をつぶって、ポケットの中に手を入れてください。何があるでしょうか。
「車のキーかな?スマホかな?昨日コンビニで買い物した時のレシート?石、なんで?」
目で見なくても、その物の形、硬さ、温度、記憶を辿って何であるか自然に分かると思います。
では、指に触れたそれが急に動いたら?クモやアリなんかの虫がいたとしたら?びっくりして思わず手を離しますよね。
この時の、物の形を探ろうとする触覚の働きを『識別系』、反対にとっさに手を離した時の触覚の働きを『原始系』と言います。
原始系の触覚の働きは、まだ生物がより原始的だった時代に獲得した触覚の働きです。この触覚は触れた物を『取り込む(食べる)』か『逃げる(抵抗する、攻撃する)』を瞬時に判断して行動するために作動します。いわば生きるか死ぬかに直接関与する感覚となっています。
一方で、識別系はもう少し進化した時に獲得した触覚の使い方です。触れた物が何であるか文字通り識別するために機能します。この働きによって私たちは細かい物の操作だったり質感、温度を触り分けることができます。
発達の過程で触覚は『原始系』→『識別系』の順番で発達します。原始系の触覚は常にオートで起動しているため、識別系を働かせていくことで原始系の反応を抑え、触覚をコントロールすることができます。
暗い場所で急に肩を叩かれたり、家族が出かけて誰もいないと思っていた家に実は誰か残っていたりするとびっくりしてしまいますよね。識別系の感覚ではなく原始系の働きが強く現れた結果、そうなってしまいます。
感覚過敏、感覚鈍麻といわれているこどもたちは、実はこの識別系をうまく働かせることができないのがその理由です。原始系が強く出てしまって、反射的に避けてしまったり叩いてしまったりすることを感覚防衛反応と言います。(触覚の場合は触覚防衛反応)
自分からはしきりに触ってくるのに、触られるのは異常に嫌がるこども(大人も)はいませんか?それは『原始系』『識別系』で分けて考えると理解につながるかと思います。
普段行っているスライムや粘土、砂遊びなどの感覚遊びは、この識別系の触覚の働きを強めることを目的としています。触覚防衛反応を弱めることで、過ごせる場所が広がったり他者とのコミュニケーションが円滑にとれるようになったりと、数多くの成長が期待できます。『感覚的』『なんとなく』な部分をしっかりと意識する事で、よりクリティカルに楽しく発達する土台を提供しています。
画像は、指先の触覚をたよりに穴の数や全体像をイメージするゲームです!