今日は中秋の名月ですね。

月や星を見上げることは、古代から人々にとって大きな影響を与えてきました。夜空に輝く月や星々は、人々の心に畏敬の念を抱かせ、神秘的な存在として捉えられました。この感動が文学や詩に表現され、宗教的な神話や信仰の一部となりました。また、天体の動きを観察することから、季節や時間の概念が生まれ、暦が作られました。さらに、星や月の動きを理解しようとする中で、数学や物理学が発展し、宇宙の法則を解き明かす学問へとつながっていきました。こうして、空を見上げるという単純な行為が、人間の知識と感性を広げ、様々な学問の始まりを促したのです。

タウマゼインという言葉をご存じでしょうか。ギリシャ語の “thaumazein”(タウマゼイン) から来ており、これは「驚く」「驚嘆する」という意味です。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、哲学の始まりはこの「驚き」からだと述べています。人間が世界や宇宙の不思議さに驚き、その背後にある原理や真理を知りたいという欲求が哲学や学問の探求につながったとされています。この「タウマゼイン」の概念は、月や星を見上げるときに感じる神秘や驚きにも通じています。月や星の美しさやその動きに心を動かされ、それを理解しようとすることが占星術や天文学、さらには哲学や科学技術の発展を促してきました。驚きから始まる探求の精神こそが、人間の知識の拡大を推進してきたのです。

科学技術が発展し、あらゆることが「当たり前」になっていくと、「タウマゼイン(驚きや畏敬)」を感じる機会は減るかもしれません。現代の便利な技術や科学の進歩によって、多くの謎や不思議が解明され、日常的な現象がより論理的に説明できるようになりました。その結果、かつては神秘的だった自然や宇宙に対する感動や驚きが薄れてしまうことがあります。昔は夜空に輝く星や月が神秘的で、人々にとって理解を超えた存在でしたが、今では宇宙の構造や天体の動き、さらには月への探査までが現実のものとなり、そうした天体に対する感情も変わりつつあります。また、スマートフォンやインターネットといった技術も、私たちが瞬時に膨大な情報にアクセスできることで、かつて感じていた未知のものに対する興味や探求心が少し薄れることがあります。

しかし、タウマゼインが完全になくなるわけではありません。科学技術が発展すればするほど、私たちは新たな未知に出会い、より深いレベルでの驚きや畏敬を感じることができます。たとえば、量子物理学や宇宙の起源、人工知能の進化など、まだ多くの謎が残っており、それらに対する理解が進むにつれて、新たな「驚き」を見つけ出すことができます。

そして何より、こどもたちの世界は本来このタウマゼインに満ちた世界です。こどもは日々新しい発見と出会いにあふれ、少しずつながらも大きな感動を与えてくれます。こどもたちは私たちが感じることが少なくなったタウマゼインをその姿を通して感じさせてくれます。

 

宇宙と同じように、こどもたちの可能性、私たちの支援の在り方もまだまだ無限の広がりがあります。お月見にちなんだ活動もたくさん行いました。

今日はこどもの姿を想像しながら夜空を見上げてみてはいかがでしょうか。